私の生業はスタイリストであり、今年で37年となるキャリアをこの分野一筋で歩んできました。
これまで数多くの著名人やエグゼクティブのスタイリングを手がけてきて思うことは、やはり一流と言われる方々はその専門分野はもちろんのこと、人柄、価値観、興味、人間関係など、大変魅力的であることです。
そして一般的に知られている”表の顔”だけではわからない、半ばプライベートの部分は意外性も伴い魅了されずにはいられません。
私は仕事上、公人のイメージコントロールも担うことがあり、イメージを作り上げる部分に深く関わります。
同時に、クライアントの裏方としていつも寄り添うのがスタイリストの立ち位置ですから、スタイリングの際に、その方の好み、ポリシーはもちろんのこと、体質や気質、時にはその時に抱えるお悩みまで伺いながら仕事をすることが多くあります。
オフィシャルな部分とプライベートな部分、両方のお顔に触れることができるのは、スタイリストならではのことでしょう。
そんな中、プライベートで親交のあった枝野和子さんの出版プロデュースが昨年、形になることとなりました。
『枝野家のひみつ』福耳夫人の20年(光文社)2019年10月出版
枝野和子さんは、誰もが知っている有名な政治家である、枝野幸男代議士(立憲民主党代表)奥様です。
鋭い弁舌から親しみやすい人柄まで、大変なパワーと魅力を持つ枝野代議士を支える妻が一体どのような方で、どのようなサポートをしているのか、知りたい方は多いのではないかと思ったのです。
枝野和子さんとは以前からお会いする機会の中で、政治家の妻という立場での話が面白くも興味深く、お話を聞く都度にそのお人柄や経験を広く世の中に伝えるすべはないものか、自然と考えるようになりました。
和子さんはSNSを使わないという強いポリシーをお持ちですが、社会に対して伝えたい思いは熱くお持ちです。
最近のSNSによる拡散力には目を見張るものがありますが、和子さんのお立場やお考えとして、正しい情報をきちんと整えた上で伝えたいという思いに、私が長年携わってきた女性誌との関係から、「出版が相応しいのではないだろうか」という思いに至ることになりました。
政治家の妻としての表現だけではなく、とても愛らしい面もお持ちの方で、例えばお得意な有名人の似顔絵を見せていただくたびに、どこかの出版社が、魅力的な女性として和子さんに光を当ててくれないかと考えるようになったのです。
出版社は私にとっていつも信頼関係を保てる存在で、長きに渡りスタイリストとして活動の場を置いた”女性誌”との繋がりを強みに、最もよい方向性やタイミングを見計らい、働きかけを考えてきました。
私がスタイリングを担当してきた数ある雑誌のコネクションで、取材インタビューなども考えたのですが、それもご主人様のお立場上、政局によっては様々な配慮事項が生まれ、一番伝えたい和子さんの魅力が伝わりきらない可能性もありました。
そこで、長く読まれる書籍として、最良のタイミングに出版できるよう、全体的なプロデュースを手がけることになったのです。
私の強みとして、キャリアの長さに加えてもう一つ「運のよさ」があると確信をしております。
ファッションは生き物ですから、思い描いた仕事の結果が得られるかどうかは最後の瞬間までわからないことが多く、独特のインスピレーションと直感力が不可欠なこと、そんな分野で長年やってこれたのは強運の賜物と思ってやみません。
和子さんの出版を本格的に手掛けようと決めた時、何十年も前に女性誌でご一緒したことのあった腕利きの編集者が、現在は単行本を編集しているというラッキーな巡り合わせをキャッチすることができました。
早速企画を持ち込んだところ、トントン拍子で企画が進み、スピーディーに出版が決定しました。
とはいえ、和子さんにとっては初めての執筆。
双子の息子さんの子育てに政治家の妻という多忙な中での作業は時に難航し、時折、政局の情勢も鑑みたり、難易度の高い仕事となりました。
世でいう”出版プロデュース”とは、著者、出版社を双方とって最良の形でつなぐことです。
もちろん読者にとっても、この著者による最高のパフォーマンスを受け取ることができるよう、原稿の内容から、ブランディング、プロモーションのプランまで責任を持って関わらせていただきました。
特にPRプロモーションはスタイリングを通じて経験を積んできた仕事でもあるので、ベストな状態に持っていけるようファッションだけでないあらゆるコーディネートも担ったりしました。
和子さんの聡明で美しくありながらもチャーミングな人柄、そして政治家の妻として、双子の母として日々奮闘する本の内容を軸に、取材される際のファッションやヘアメークの外見的印象は媒体のターゲット層に親しみを持たれるよう、それこそスタイリングの真骨頂ですからイメージコンサルテーションしました。
ここまでサポートの幅が広がったのは、ご主人の枝野議員は公人であっても彼女は言わば一般人で表に出ることが初めてでしたから、著者としてそれなりのプレッシャーを感じているお気持ちがよく理解できるからです。
私の職業柄、これまでそうした経験のない方がある日突然、晴れ舞台でスポットを浴びる局面に立ち会うことがしばしばあります。
受賞などによる突然の記者会見や儀式などへの出席、メインキャストへの大抜擢などがそれに当たります。
その方の置かれた環境にもよりますが、今回一般人でマネージメント事務所に属していない和子さんですから、私がマネージャーのように取材インタビューの度に衣装からヘアメーク、話す内容まで細く打ち合せして、和子さんの最高の姿を仕上げることに喜びをもって関わらせていただきました。
このように綿密な下準備により、新聞、雑誌、ウェブなどのインタビューでは和子さんの魅力が十分に伝わり、本も初出版でありながら発売2週間で増刷という記録を打ち立てることができました。
そして当初から、テレビには一切出演しないと幾つかのオファーも頑なに拒否されていた和子さんですが、奇遇なご縁で唯一お受けした番組で1月17日 TBSの「爆報!THEフライデー」への出演が決まり、より多くの方にその姿が伝わることとなりました。
これが最初で最後のテレビ出演になるかもしれませんが、和子さんの伝えたかった思いがこのような形で実現し大変嬉しく思っております。
これで昨年の秋からのプロモーションも一区切りつきます。
今回私にとっても出版プロデュースは初めてではありましたが、今まで芸能人から文化人、ビジネスパーソンのスタイリングをする上での延長線上でやっててきたことなので、一切迷いや不安もなく自信を持って従事することができました。
普段からパーソナルスタイリングでも意識的にイメージコンサルテーションをしながら行っていたからこそ、今回のサポートにより出版が成功したことは私にとっても大きな喜びとなりました。
ビジネスパーソンの方が出版を考えていたとしたら、ご自身でセルフプロデュースするのか、それとも外見を整えるプロから客観的な意見を取り入れながらイメージコントロールを図るのかで、出版後のビジネスの成果は大きく変わるのではないでしょうか。
和子さんは主婦という立場での出版を望まれましたが、政治家の夫を支える内助の功として枝野氏のイメージも少なからずアップできたのではないかと思っています。
その答えは実際に「枝野家のひみつ」をお読みになった方ならお分かり頂けるでしょう。
私はスタイリング・コンサルタントの立場として、政局や政治的な動向には一切関わらないスタンスに徹しておりますが、何れにしても和子さんが今回の出版において、一層光り輝くことを願ってやみません。
そしてどんな立場や価値観をもっている方でも、その方の最高のパフォーマンスを引き出すという仕事に、出版プロデュースという手段も加えて、今後も尽力をしていきたいと思います。
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